2012年09月10日

美少女の来訪

 雷に打たれたようなという表現は、しょせん単なる比喩か、言葉のアヤに過ぎないと思っていた。息子の海斗が連れてきた、その女の子を見るまでは。

 先週の日曜日、夫はゴルフで朝早くから外出していた。洗濯や掃除といった家の中の用事をあれこれと片付け、やっと一息ついた昼過ぎに息子が彼女を連れて戻ってきた。

 息子は、日下部里奈という名のその少女を、恋人として私に紹介した。中学2年生が同級生のガールフレンドを「恋人」と呼ぶのはほほえましいが、そうい言いたくなる気持ちはわかった。

 さらさらの長い黒髪に、品のいい小顔。スレンダーな体から伸びる手足は華奢で、お嬢様っぽいセンスのワンピースがよく似合っている。私が小さい頃によく読んだ少女文学のヒロインを、日本風にアレンジしたような美少女だった。

 リビングのソファで向き合って最初に話したのは、学校のことや、将来は何になりたいかといった話題だった気がする。里奈は言葉遣いもしっかりしていて、物腰に育ちのよさが感じられた。

「私ね、ファッション雑誌の編集の仕事をしてるの。モデルの中にも、あなたくらい可愛い子、なかなかいないわ」
 大手出版社ではないものの、若い子の間ではそこそこ知られた雑誌の名前を聞いて、里奈は目を輝かせた。

「里奈さんは、ファッションに興味ある?」
「ええ、あります。でも、私、そんなに背が高くないから」

 ファッションという言い方をしたのに、モデルの話だと受け取るのは、やはり人並みはずれて可愛いという自覚があるのだろう。

「モデルの需要も、最近はいろいろなの。ファッションショーだけが仕事じゃないし」
 それからしばらくは、モデルの種類や撮影の様子、記事の組み立て方などが話題になった。一時間ほど話し込んだ後、息子が彼女を送って行くことになった。

「これからは、いつでも気軽に遊びにいらっしゃいね」
「ありがとうございます、おば様」
 くっきりとした笑みを浮かべて、里奈はうなずく。

「この子がいない時に、女だけでガールズトークしましょう。海斗の秘密、いろいろと教えてあげるから」
「やめてよ、母さん。余計なこと言ったら、許さないからね」

 口を尖らせた海斗があわてて遮ったので、私と里奈は屈託なげに笑いあった。しかし、私の方は必ずしも無心で会話を楽しめたというわけではなかった。
posted by ミストレス at 16:13| 官能小説